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普通の人生にはない時間~河合隼雄先生の著書「河合隼雄のカウンセリング講座」より

グリーフケア 、スピリチュアルケア、個人面談。
一人の人とその時間真剣に向き合う。

寄り添ってもらった側の体験としては、その体験が生きる力になっていくと実感しています。ケアする側も本気だけどされる側も本気でさらけだすからね。

さらけだせるのは本人の力でもあるけど、ケアする側向き合ってくれるだけの覚悟があるっていうのが動物的な感覚でわかる。

また、こちらの殻を自然と破らされた、自然と心深い次元に一緒に降りてくれたことなども思い出します。

今回は河合隼雄先生の本。
読みやすい上にとても深いことが書かれていて、何度も読んで自分のものにしたい本です。

「カウンセリング講座」なので文字通りカウンセリングのことを書かれていますが、グリーフケア・スピリチュアルケアにおける「寄り添う姿勢」とほとんど同じことが書かれています。

「比較的初歩的な内容である」とありますが、本当に奥が深いです。

「本書はカウンセリングやそれにかかわる心の問題について、いろいろな角度から述べているが、比較的初歩的な内容のものである。とはいっても、カウンセラーにとっては、その「初歩」がむずかしいとも言えるので、本書は初心者のみならず、経験ある方も読まれると、あんがい参考になるかもしれない。」

さて、今回のタイトルの「普通の人生にはない時間」

誰かと本当に顔を合わせて深く話すということがいかに貴重であるかということが書かれています。

以下「河合隼雄のカウンセリング講座」より。

p.11

普通の人生にはない時間

考えてみたら、僕はこんな贅沢なものはないと思います。カウンセリングは、来られた人と五〇分間ひたすら話をするわけでしょう。

そして、また次の週に来てもらって話をする。ときには、一週間に二度会う人もあるし、三度会う人もあります。長いときには五年も六年も、十年も会っている。これは、すごいことだと思いますね。

このことは、前に言ったかもわかりませんが、みなさんご存じでしょうか、東大の名誉教授になられた中根千枝という先生がおられます。『タテ社会の人間関係』という本を書かれた有名な先生です。

私は、親しいからよく雑談をするんですけれど、その中根さんが私に「河合さん、あんたの仕事はいいな」と言われるんです。

「あんた、忙しい、忙しいと言ってるけども、一人の人を相手に五〇分間ずっと話をしてるんだろう。そんなこと、普通の人の人生にないよ」と言うんです。そういえばそうですね。

 

たしかに、みんなで集まってワァワァ話をして、それが五時間続いたり、六時間続いたりすることはあるかもしれない。

それから、一人の人と話をすることがあったとしても、まず一人の人と真剣に五〇分間話をするということは、普通はないと思いませんか。

やっぱり、喫茶店で話をしていても、何かうわさ話になったり、ほかの話になったりして、よいかげんで別れますね。

たとえば誰かと話し込んだと言っても、それはその日はものすごく話し込むかもわかりませんけれど、同じ調子で続けて会うことはないですね。

 

ところが、われわれがカウンセリングをやっているときというのは、ある人と五〇分間本当に真剣に話をして、また次に会ったときに五〇分間真剣に話をする。

面接をしている間は電話にも出ません。そんなふうに、まるっきり外界から離れてひたすら一人の人と話し込むなんていうことは、ほかの人の人生にはめったにないんだ、と。

「だから、河合さんは、忙しいと言ってても、そういう時間をずっと持っているからいいね」と言われました。

そう言われればすごくいいような気もするんですが、しんどい気もしますね(笑)。

みなさんも、五〇分間誰かの話を聴いていたらどんなにしんどいかということは、やってみられたらわかります。

しかし、何でもいいことというのはしんどいのは当たり前で、しんどくなくていいことというのはめったにありません。

しんどいのはしんどいですが、中根先生にそう言われると、自分でも「ああ、いいことをやっているな」と思います。

こういうふうに、カウンセリングというのは、「個人」をすごく大事にしていく。ところが、日本の教育では「どうすれば、どれだけたくさんの人が、どれだけ短期間に、どういうことが勉強できるか」と、そういうふうに考えます。

だから、どうしても常に全体のことを考えるという発想が普通です。

そういうふうに考えるから、小学校はこのぐらいにしておきましょうとか、このへんで中学校に入れましょうとかいうことになって、いろんな制度ができていくわけです。

河合先生のおっしゃるよう、一人の人と濃く深い話をする機会というのは、考えてみれば日常ではほとんどありません。

例えば、会社では仕事に関することが、会話の主な内容になります。雑談をすることはあっても、心に向き合って感情が揺さぶられるなどといううことは普通ありません。

家庭でも似たようなものです。家族なので深い話をしたいと思ってはいても、結局その時間すら取れないほど、毎日が忙しく過ぎていきます。単なる情報交換のような会話になってしまったりします。

何か問題が起こった時や悩みの相談がある時は、深いレベルで会話をしますが、それでも核心をつくようなことを避けてしまったり、途中で話の腰を折られて話題そのものが変わってしまったりというのはよく起こります。

このようなことを考えるとカウンセリングをはじめグリーフケア・スピリチュアルケアでの面談など「普通の人生にはない時間」であり、相談者のみならず援助者にとっても大変貴重でありがたい時間なのだということを思い知らされます。

そして、相談者側にとってもやっぱりそうやって一人の人が、

「私だけのためにその時間を引き受けてくれる、真剣に耳を傾けてくれる、心を揺らして一緒にいてくれる体験」というのは、本当に贅沢なこと。私自身が聴いてもらった体験からそう思います。

あの人があの時ああいうふうに聴いてくれた、あのような言葉をかけてくれた、涙を浮かべて優しいまなざしで見つめてくれた。

寄り添ってもらった体験が、その後生きていく中でどれだけ力になったことでしょうか。

人は一人では抱えきれない苦しみを抱えていたとしても、あまりに苦しいと辛い苦しいという感情を抱いていることすら、自分ではわからなくなります。直視するのが難しい状態です。

心の奥、たましいはその苦しみ悲しみを、受け止めて癒したいと感じていたとしても、表層意識ではそうは思っていないこともあります。

たとえ表層意識で向き合いたいと思っていたとしても、自分ひとりでそれに取り組むのは難しい。

誰かが真剣に寄り添ってくれるというのは、自分ひとりでは心の奥に手が届かずに拾えなかったものを、一緒にそこまで連れていって拾って、ちゃんと「見る」「受け止める」ことを手伝ってくれるということです。

一度のセッションでは難しいかもしれません。複数回必要かもしれません。

その人の苦しみではないにもかかわらず、心を揺らして一緒にいてくれる。生きていてよかった、色々なものを抱え込んでいる私だけど、そんな私でこれから生きていこうと思える。

誰かが一人の人間として大切に接してくれることで、自分のことを、自分の人生を大切にしたいと思えるように変化してきます。

 

深く真剣に相手に向き合うというのは、エネルギーのいることですが、いのちを支える行為とも言えるのではないでしょうか。

今回は河合隼雄先生の本「河合隼雄のカウンセリング講座」の一部を紹介させていただきました。

この本は本当に何度読んでも発見があります。まだ読んでいない方はぜひ。

以上になります。

このようなブログを読もうとするあなたはきっと心優しい人。そして生きることについて真剣に考えているのではないでしょうか?

あなたの人生が彩り豊かで優しさに満たされたものになりますように。あなただからこその人生になりますよう祈りを込めて。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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