介護職として働きはじめてまだ1か月と浅く、今後まだまだわからないことが出てくるかと思いますが、現時点で感じていることを書いてみました。
介護職として、現場でスピリチュアルケアができるのかということについて
現在、グリーフケア・スピリチュアルケアのライフワークとは別に、グループホームで介護のパートをしております。
介護の現場もまたスピリチュアルケアが必要とされておりますね。
スピリチュアルケアというと通常は「対話」を通してというイメージを持たれるかと思います。
時間を取ってゆっくり向き合って対話をするのがスピリチュアルケアなんだと。
スピリチュアルケアの専門職やボランティアとして病院や介護福祉施設に入っている場合はそれが可能かもしれません。しかし医療スタッフや介護スタッフの一員としてそこで働いている場合は、対話以外の医療的ケアや介護業務が主な仕事なので、なかなかゆっくりと相手に向き合って話をするという時間が取れません。
時間が取れない中、それでもスピリチュアルケアのように、相手のスピリチュアリティ、相手のいのちに向き合い、「大切にされているんだな」と感じてもらえるような時間を過ごしてもらいたい、そのように考える人は多いかと思います。
コミュニケーションで伝わるのは言語情報だけではない「メラビアンの法則」
人と人がコミュニケーションする際、実際に言語情報から伝わるのは全体のたった7パーセントにすぎないということです。
実際に伝わるのは
・視覚情報 55パーセント
→表情や態度、姿勢、服装など。
・聴覚情報 38パーセント
→声のトーンや話すスピード。
・言語情報 7パーセント
→話の内容。
対話を通してのスピリチュアルケアの場合も、自分の語りに対して相手がどう反応したかということが伝わりますね。話の内容に対してどんなアドバイスをくれたか、どんな解決策を教えてくれたかよりも、どのような態度で聴いてくれたかということが大事になってくるわけです。
内容に関して真摯に向き合ってくれることも大切かもしれませんが、解決できない問題を打ち明けることも多く、そういった事柄に対して安易に自分の意見を言うことで「軽く扱われた」「真剣に聴いてくれなかった」と受け取られることもあります。
苦悩を抱えているという姿そのものを受け止める、苦しむ相手の傍らで一緒にいるということが、何より大事になってきます。
ではこういった対話の時間の取れない介護の現場で、スピリチュアルケアの心を生かすにはどうすればいいのでしょうか。
介護を通してスピリチュアルケアはできる
私自身、グループホームという介護の現場に入って気が付いたことですが、人手不足で常に忙しいということです。
たまに利用者さんとゆっくり話ができることもありますが、時間が取れたとしてせいぜい10分かそこらです。
本音を言えば介護業務よりもゆっくりと時間を取って対話をしたいという希望がありますが、介護のパートという立場なのでそれは難しいのですね。
たとえスピリチュアルケア専門職として雇われた場合を考えても、現場のスタッフの数が足りていない状態であれば介護もやってほしいと頼まれることになるのではと思います。
このように対話の時間がなかなか取れないという状況であっても、日々の介護やお世話、ちょっとした言葉がけをスピリチュアルケアの心で行うことは可能と考えています。
スピリチュアルケアを「対話のみ」ととらえるのではなく、もっと広くとらえることですね。
何をもって「スピリチュアルケア」というのか。
実際に介護の現場では「パーソンセンタードケア」という概念が大切にされていますが、これはまさにスピリチュアルケアの心を表しています。
先ほど、コミュニケーションで伝わるのは言語情報よりも視覚情報や聴覚情報が多くの割合を占めると述べました。
特に介護では身体の接触も多く、直接抱きかかえて移乗させたり、入浴介助や食事介助、トイレ介助にしても、通常の「対話」というコミュニケーションに比べて接触の機会が多くなります。そのため介護そのものを通してこちらの在り方が伝わってしまいます。
対話を通してのスピリチュアルケアと異なる部分というのは、それこそ言葉以外の部分、介助者の動作一つひとつ、言葉を発する際の声のトーン、目線の高さなどにも気を配る必要があるということなのだと感じました。
介護にスピリチュアルケアの訓練が生かされる部分はあるのか
私の体験ですが、大いに生かされていると感じます。
介護では「パーソンセンタードケア」が大事だと言われていますが、人としての姿勢など基本的なことはスピリチュアルケアの訓練で学んだことが役に立っています。
介護未経験でも働くことが可能な現場はありますが、このような訓練を受けることが無かったら、自分の感情に振り回されて、思い通りにいかない高齢者や認知症の方の言動にイライラしたり、暴言を吐いてしまったりということが起こってしまうかもしれません。
また、身体機能や認知機能の衰えがあるゆえ、それを人間的な欠陥だととらえてしまうと、元気で健康、頭脳も明晰に働く人間の方が優秀なのだという間違った思い込みによって、相手を見下し、尊厳を踏みにじるということにもつながりかねません。
効率やデータ、目に見えるものの価値がより大事とされるような価値観を抱き続けている限り、病気や老い、その背後にある目に見えないものの価値を感じられない状態では、自分の仕事に対する意味も見いだせなくなってしまうように思います。
スピリチュアルケアでは相手のペースを大事にするということを学びますが、この姿勢は介護の現場でも、相手の目線に合わせたり、声のトーンを意識したり、言葉がけ一つ、触れ方一つにしてもどうすればいいか自然とわかるので、これまでの体験がとても役に立っていると感じています。
ある利用者は入浴介助が難しく、初めての担当だと暴れることもあると聞きましたが、私がお手伝いした際はなんの問題も無く、後でそのことを知ってびっくりしました。
意識していたのは、信頼関係を作ることと、これから何をするのか相手にわかってもらうためにきちんと説明をするよう心がけていたことです。
しかし介護技術に関しては全く素人で未経験のまま働くことになったので、これからしっかりと身に着ける必要があります。
どう支えればいいのか、どう動いてもらったらいいのかわからない。初めての介護に腰が引ける
今まで体験したことのない、未知のことをするので、腰が引けてしまう部分があります。
特にベッドから車いすへの移乗や、車いすからベッドへの移乗など、どう支えていいかわからない、次の動作にどうつなげていいかわからないのです。
相手は高齢者ということもあり、無理な力を加えると骨折してしまうんじゃないかとか、痛みを与えてしまうんじゃないかとか、不安と緊張の気持ちから、教わったこともすぐに抜けて行ってしまい、自己流で動かそうとしてしまったり変に力が入ってしまうこともあります。
これでは自分も腰などを痛めますし、相手も不安に感じてしまいます。
一応丁寧に教えてもらってはいるのですが、何度も練習をするというわけにもいかず、また移乗などの介護が必要な方の人数も少ないことから、回数を多くこなしているわけでもありません。
そのためなかなか上達しづらいので、このような本で勉強しておくと少し安心できますし、何度かやっているうちにイメージとコツがつかめてきます。
ただ、こういった場合も自分にも相手にも正直に「初めてなのですみません」と言えることはスピリチュアルケアの基盤があるからだと思いました。これがもし経験なくもっと若い自分であったなら、だまったまま作業に集中してしまい、無理に動かそうとしていたかもしれませんし、イライラして仕事が続かなかったのではないかと思います。
私にとってはほとんど未経験のことなので、この本でしっかりと学ぼうと思います。
とても大切なことが書かれてありました。
p.2
はじめに
介護で大事なのは、相手に寄り添うこと。
一方的に介護する、されるという関係ではなく
相手とのコミュニケーションを取りながら進めていく。
ただ手を貸すのではなく、
二人で協力して互いの力を出し合うことで
相手の持っている可能性を引き出す。
これが人体力学が目指す介護のかたちです。
まさにスピリチュアルケアで言われていることと同じです。
相手の中に力があるということ。
介護というと、どうしても介護する側に力があるように感じてしまいがちですが、相互に協力しながらということですね。
元々持っている相手の力を奪ってしまわないようにということも心がけていきたいです。
深い対話はできないかもしれないが、ありのままでいられるという感覚を感じてもらうことは可能では
介護の現場で、スピリチュアルケアをどう生かそうかというのが今回の内容です。
以下、まとめますと狭義と広義のスピリチュアルケアととらえるということです。
1.深い対話を通してのスピリチュアルケア
従来のスピリチュアルケアの概念に近いです。これは職種によっては可能な場合もあります。スピリチュアルケアの専門職(スピリチュアルケア師、臨床宗教師、ボランティア)や臨床心理士や相談員などが担当する場合です。
現場のスタッフが担当するとなると特別に時間を設ける必要が出てきたりと、人手不足をまず解消しないと難しいように思います。
全く不可能ではなく、信頼関係ができている場合は、ほんの数分間のやり取りが思わぬ深い話につながることもあるでしょう。
2.スピリチュアルケアを対話という枠に当てはめずにもっと広くとらえる
介護そのものを作業ではなく、一つひとつが広義の意味でスピリチュアルケアになっているのだととらえれば、常にそれは可能ということになるのではないでしょうか。
「大切にされている」「自分に興味関心をもってくれている」そのように存在を受けとめられる体験です。
ベテランの職員ですと言葉がけ一つひとつに愛がこもっているのがわかりますし、介護そのものがケアになっているように感じます。
ケア提供者としてどちらが自分に向いているのか
自分は一体どちらが向いているのかということも、今後考えていかないといけないなあと思いました。
現時点ではやはり今までずっとやってきたということもあり、深い対話ができたときの方が喜びを感じます。
スピリチュアルケアに興味があってこのブログをお読みの方は大体そうなのではないかと想像しています。
逆に深い対話は苦手かもしれないけれど、介護そのものにしっかりと向き合えるという方もいらっしゃるでしょう。
私が働いている所の職員も、プロフェッショナルの方ばかりで、スピリチュアルケア云々言わなくてもそれが自然とできているのですね。
仕事に誇りを持って、目の前にいる人の尊厳を大切にし、敬意を持って接しているのが伝わってきます。
今日も読んでくださりありがとうございました。