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生きるのがしんどい。癒される、気づきを得る、価値観の転換、ものの見方ががらりと変わる・・・ってどこがどう変わるの?
生きるのがしんどい。生きづらい。そう訴える人の中には、その人にとってとても大切な人や物の喪失体験があったり、
自分が深く傷つくような体験があったりと
心の奥深くに痛みを抱えていることが多いです。
大切な人との死別や、いじめ、大病、家族の病気など大きな出来事があれば
それが原因でしんどいのだということが想像できます。
特に目立った出来事が思い浮かばないにも関わらず、日々の生活に生きづらさやしんどさを抱えている場合もあります。
そのように自分にとって大きな出来事と認識していなくても
例えば幼少期に両親の愛情を感じることが少なく、自由に振舞える環境ではなかったため
感情を閉ざしてしまい、自分が深く傷つき、痛みを抱えているということすらわからなくなった結果
「理由はわからないけどしんどい。生きづらい」と感じているのかもしれません。
辛い、しんどい原因は人それぞれですが、自分にとってとても大切なものを失った結果ということがほとんどです。
大切な人や大切にしていた物との別れはもちろん、自分の心の中の喪失も同じです。
他者から愛されること、自分への信頼、自分を大切にする自尊心、自分はできるんだという自己肯定感、
自由、他者への信頼、他者への親切心、世の中に対する安心感、平安な心・・・。
普段、あまり意識しないかもしれませんが、このような感情を感じることが無くなってしまえば苦しくなるのは当然です。
しかし第三者からみてわかりにくく、自分でも「特に辛いことがあったわけでもないのになぜしんどいのだろう」と不思議に思うこともあるでしょう。
意識が及ばないところで、ちょっとした日常のやり取りの積み重ね、特に幼少期の環境によって自分や周りの世界に対する無意識レベルで抱えている「ビリーフ」「価値観」「信念」「思い込み」が作られていきます。
目立った喪失体験やトラウマ体験が見当たらなくても、どこかで深く傷ついた体験があります。一つだけではなく生きていたら複数あるでしょう。傷ついたことがあったとしてもそれがのちに癒され、解放されていれば影響はありませんが、傷を抱え続けている場合はしんどくなって当然です。
例えばこんな体験ありませんか?
友人とのやりとりでなぜかトラブルが絶えない。
仕事を始めてもなぜか長続きしない。
人に何か頼まれると断ることができずストレスを抱えている。
誰かの言動に対して腹が立ったり受け入れることが難しく、イライラすることが多い。
これらは自身の抱える長年かけて培ってきたビリーフ(価値観や信念)が影響しています。
「ビリーフ」は心の中のどこに存在するのか
私たちの行動や言動、外界に対する反応の元になっているのがビリーフ(価値観、信念)です。
ではそのビリーフは心の中の一体どこにあるのでしょうか。
心の表層から順に
1.思考、考え、善悪の判断。~するべき、~するべきではない。「こういう状況ではこのように行動する」など。
2.感情、気持ち、欲求など。楽しい、悲しい、寂しい、わくわくする、怒り、やりたい、やりたくない、など。
3.ビリーフ、価値観、思い込み、偏見、信念など「それが当然」と無意識レベルで思い込んでいること。
ビリーフは「3」にあるのです。つまり、感情や思考の大元となっています。
人が癒される、変容するという場合、1の部分つまり行動や言動を一生懸命変えようとしてもあまり効果が期待できません。考え方ややり方を変えるというのは表面的には変わったように見えますが、多くの場合根本は変わっていないのでまた同じようなことで苦しむことになります。
表面的な解釈を変えても、それは無理やりそう思おうとごまかしている場合も多いですし、感情はその変化についていっておらず、本心を無視して形だけ取り繕おうとしているので、結局自分に制限をかけて育ってきた人は同じことを繰り返しているということになります。
心の底から気づくというのは、ものごとの見方が根本から変わるということです。
例えていうと3Dアートを見る時。それまで平面にしか見えなかった絵が、ある見方をすることで立体に見えます。
また、だまし絵などで、絵の中に隠れてあるものが見えた時に「アハ体験」をします。
ビリーフに働きかけるというのは、このように「アハ体験」をすること、ものの見方が根底から変わるということです。
ですので、自分の内面を深く掘り下げ、感情が大きく揺れるという場合によっては辛い振り返りをし、さらにはその奥のビリーフに気づき「ものの見方が転換する」という肚レベルの変容があった時に「癒し」や「気づき」があるということです。
浅いレベルで「考えが変わった」ということではなく、もっと深いレベルで感情の揺れを伴った気づきが訪れるということ、それが人間全体の変化変容につながるということになります。
感情を取り戻す
ある事柄に対して、「それは〇〇だ」と判断するのが思考です。その思考と同時にそのことに対して感情を抱いていると思います。思考と感情がずれていることが生きづらさやしんどさにつながります。
嬉しい、いやだ、今はやりたくない。
生きづらさを抱えている人の場合、育ってくる中で感情をありのままに感じることで怒られたりトラブルになったりということを通して、そうならないために感情を感じても押し殺すようになってしまっていることが多いです。
抱いている思考は「それは良いこと」と思っていても感情レベルで違和感があるということは多々あります。
「〇〇しなければならない」という思考の奥には「本当はいやだ」という気持ちが隠れていることは多いです。
生きづらいということは自分の本当の感情を押し殺して感じないようにして生きてきた。子どもだったのでそうすることで自分を守り、生きてきたのですが、大人になった今でもそのパターンが続いているため、もはや自分でも「本当の気持ち」「本当はどう感じているか」がわからなくなり、自分で自分をごまかし続けた結果、「本当の自分」がSOSを出しているのです。
「本当はどうしたいの?」と。
そのため、まずは感じているであろう感情に気づき、拾い上げ、受け止めること、認めることが自分を取り戻すうえで大切になってきます。
感情を取り戻すだけでもずいぶんらくになります。
思考や感情の元「ビリーフ」を突き止め、解放する。「アハ体験」
どうしてそのような考えを抱くのか。どうしてそのように行動してしまうのか。
どうしてそのような感情を抱くのか。
あらゆる思考・行動・感情の根っこには「ビリーフ」が存在します。
ビリーフがあることでそれが自分を勇気づけたり、人への信頼となったりと人生がスムーズに進むこともありますが、
逆に「制限」となってしまうこともあります。
どんなビリーフを抱いているかによって人生が変わってくるということです。
生きづらい、生きるのがしんどいという場合もその元となるビリーフがあります。
自分がどのようなビリーフを抱えているのか、自覚が難しい場合が多いので、まずは感情を感じるということを入り口にして探っていくことになります。
セッションではどのように相談者の話を聴いているのか
クライアント、相談者の語りそのものを通して、どのような感じを抱くのかということから、生きづらさの元になっているビリーフを読み解いていきます。
例えば、とても辛かった出来事を語る様子から、
「話の内容はとても重いのに、それほどでもないように話すのはなぜだろう」
「こちらが質問をする隙もないほど、早口で話し続けるという背景の感情はなんだろう」
という風な聴き方をしています。
辛いことを過小評価するその態度はどこから来ているのか、早口で話すその態度の元となった体験は何なのか。
話の内容を掘り下げることと、コミュニケーションのパターンに現れるその人のビリーフを感じ取り、掘り下げます。
カウンセリングやグループワークのセッションでは、対面しているその場、「今ここ」の感情に焦点を当て、そこから感じ取れる感情を読み解き、対話を進める中でビリーフにアプローチし、解放していきます。
ケア提供者も同じプロセスを経る訓練を受けている
スピリチュアルケアのカウンセラーやチャプレン、臨床宗教師などのケア提供者も自分の心の深くを見つめるという訓練を受けています。
自分の心を深くさぐり、自分自身も癒される、自己受容をするということです。
自分の心をどれだけ深く探ったか、どれだけ癒されているか、という以上に他者の心の深くを探ることはできませんし、自分が癒されている以上に他者に癒しをもたらすことはできません。
クライアントが変容するのは苦しみのプロセスを通りますが、ケア提供者の訓練も同じです。
千と千尋の神隠しのキャラクター「カオナシ」が湯屋の中で大暴れし、食べたものを全部嘔吐するというシーンがありますが、まさにああいうイメージです。
途中の苦しみは激しいかもしれませんが、最後はすっきりと浄化されています。
関連記事
千と千尋の神隠し。カオナシの抱えるスピリチュアルペインとは。
自分でビリーフの変容を促す方法は?
上記の記事でも述べましたが、以下の2と3がカギになります。
1.思考、考え、善悪の判断。~するべき、~するべきではない。「こういう状況ではこのように行動する」など。
2.感情、気持ち、欲求など。楽しい、悲しい、寂しい、わくわくする、怒り、やりたい、やりたくない、など。
3.ビリーフ、価値観、思い込み、偏見、信念など「それが当然」と無意識レベルで思い込んでいること。
瞑想をすることである程度心の深い所へのアプローチができますが、人によっては続かないこともあります。
瞑想では日々、少しずつの変化しか感じられないかもしれませんが、効果はあるので一日数分でも取り組むと良いでしょう。
他の方法としては、ビリーフの元となっている出来事を心の中で再体験することです。
静かに心を見つめることのできる環境を用意し、心残りの出来事や傷ついた出来事を思い出し、自分の感情を受け止めます。涙が出たりと激しい感情の揺れがありますが、このプロセスは必要なもの、千と千尋の神隠し「カオナシ」が暴れ回るシーンがありますが、同じように苦しむ体験は必須なのだとあらかじめ覚悟をして取り組むといいでしょう。
対面のセッションの方が的確にビリーフにアプローチすることができますが、費用が高い、遠方などの理由がある場合はこのような教材もあります。
→→西尾和美の アダルトチルドレン 癒しと回復のためのセルフスタディキット
西尾和美先生の本は以前から私も読んでいて、トラウマケアやアダルトチルドレンのケアのプロだということは知っていました。
年に数回「リプロセスリトリート」というトラウマを再体験し、根底から変容を促すワークを開催しているようですので、そちらに行ってみるのも良いと思いますが、一つ教材を持っていればそれを使って何度もワークをすることができるので費用的にはかなりお得です。
まとめ 変容のカギは根底にあるビリーフにアプローチすること
生きづらさをどうにかしたいという場合、表面的な「考え方」を変えるというより、それを生み出しているビリーフそのもの、価値観そのものを探っていくことがカギになるということ。
そのためには入り口となる「感情」を感じ、心残り、傷となっている出来事を「再体験」し、一時的に苦しむプロセスを経るということ。
それを越えたところに「ああ、そうだったのか」という「アハ体験」、変容がもたらされる。
事実は変わらなくてもものの味方そのものが根底から変わることで、自分も周りも変わる、ということです。