悲しみを通じてしか開かない扉・・・・。
自分にとってとても大切なものを失うという体験によって、私たちは心の深いところまで降りざるを得なくなります。
心の奥底で、一体何と出会うのでしょうか。
自分自身との出会いでしょうか。
あるいは他者でしょうか。
愛する人との別れを体験した者が発する言葉はなぜか心の深いところに響きます。
どうしてそのような言葉によって心が動くのでしょうか。
自分と同じものがそこにあるからでしょうか。
今回は若松英輔氏の「悲しみの秘義」を紹介します。
本の帯から、
『久しぶりに「一生モノ」と思える本に出合った―俵万智』
かつて日本人は、「かなし」を、「悲し」とだけでなく、「愛し」あるいは「美し」とすら書いて「かなし」と読んだ。
悲しみにはいつも、愛しむ心が生きていて、そこには美としか呼ぶことができない何かが宿っている。
人生には悲しみを通じてしか開かない扉がある。
悲しむ者は、新しい生の幕開けに立ち会っているのかもしれない。
―「悲しみの秘義」より
宮澤健司、須賀敦子、神谷美恵子・・・本書で引用される人たちの多くは、愛する者を人生の途中で失うという経験をしている。
引用の達人である著者は、切り出してきた宝石のような言葉たちに独自の光をあて、そのまま出会っていたら気づかないような輝きを見せてくれる。(中略)。
死者や悲しみや孤独について書かれた文章を、これほどまでに著者が読み解き、そこに自身の心を見出す理由は、「彼女」という章で明らかになる。
引用の達人などと簡単に書いてしまったけれど、それは魂を賭けて言葉を味わった軌跡なのだ。
静かになれる時間をとって、ゆっくり味わいながら読みたい本です。
中身をここで説明してしまうと本の良さが伝わらないと思いますので、興味のある方はぜひ手に取って読んでみてください。
今日もありがとうございました。