私たちは毎日生きていく中で、
さまざまなものを失います。
そしてそれが自分にとってとても大切なものであれば
大きな悲しみに襲われます。
悲嘆とは字のごとくまさに「嘆き、悲しむ」ことを言います。
英語ではgrief(グリーフ)と呼ばれており、
近年では「グリーフケア」という悲嘆に対する心のケアも
一般に知られるようになってきました。
嘆き悲しむ「悲嘆」「グリーフ」は
生きている限り誰もが経験することであり、
その原因の多くは「喪失体験」にあります。
しかし、全ての喪失体験が悲嘆につながるわけではありません。
人なら誰でも体験する 喪失の種類
グリーフケアの現場では
大切な人との「死別」に対するケアがポピュラーですが、
死別以外にも喪失体験はたくさんあります。
死別や離別のように人との別れも喪失ですし、
物や環境との別れも喪失になります。
・死別
・離別(離婚、恋人と別れる、絶交)
・健康の喪失(老化、認知症など記憶の喪失、身体の一部を喪失、臓器摘出など)
・環境の喪失(災害、引っ越し、卒業、結婚、出産)
・経済的な喪失(失職、退職など)
・自尊心の喪失(いじめ、虐待、暴力、誹謗中傷など)
目に見える喪失、目に見えない喪失
上記に喪失の種類を上げました。
これら以外にも例えば大切にしていたピアスを無くしたなど
日常生活でも何かを失うことは誰でもありますし、
そのようなものも含めると生きているだけで
毎日何かを喪失していることになります。
目に見える喪失、目に見えない喪失の区別ですが、
第三者から見て「あの人は〇〇を失ったんだ」とわかるものが
「目に見える喪失」となります。
ですから、喪失した本人が人に知られたくなくて隠している場合は
「目に見えない喪失」となります。
「死別」は「目に見える喪失」となる場合が多いのですが、
それが「自死(自殺)」の場合、遺族は知られないようにと
隠すことがあります。
そのような場合、死別であっても
「目に見えない喪失」となります。
目に見える喪失
死別、離別、身体の一部を喪失、環境の喪失、退職や離職など
目に見えない喪失
自死(自殺)、流産、死産、中絶、自尊心の喪失、安全の喪失、臓器の摘出など
明確に区別ができるわけではなく、その人の状況によって変化します。
人から見て「あの人は〇〇を失った」とわかるのが「目に見える喪失」ということです。
「喪失」と「悲嘆」は違う。全ての喪失が悲嘆につながるわけではない
喪失体験は人によって受け止め方がさまざまです。
ある人にとっては「引っ越し」という以前の住環境を失うことは
とても辛く寂しいことのように感じるかもしれませんが、
別の人にとっては逆にそれが「新たな環境が楽しみ」
という感情を生み出すことも考えられます。
「死別」にしても一時的に感情の落ち込みがあるだけで
その後はうまく折り合いをつけつつ
短期間で日常生活に戻ることのできる人もいれば、
数か月、数年経っても大切な人との別れが
辛くてたまらないという人もいます。
個人差もありますし、状況にもよるでしょう。
参考文献
「グリーフケア入門: 悲嘆のさなかにある人を支える」 高木慶子
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